家族や友人の死、離婚、病気などは大の大人にとっても人生を揺るがすもので、そういった困難への立ち向かい方や、悲しみの乗り越え方あるいは受け入れ方をマスターしていると自負できる人ってどのくらいいるんでしょうか。その上、もし子供がいたら? 親としてどのように子供の手を引いて、人生の混乱を通り抜ければいいのか、私はさっぱり自信がありません。

ということで読んでみました。

『最悪なことを、子どもとともに乗りこえる心の習慣』バーバラ・コロローソ



この本では、死、子供の病気、離婚などの際の子供への対応、さらに血の繋がらない家族(養子や再婚家庭)における子育てが、子供の年齢別にかなり具体的に書かれています。また、どのような家庭でも使える躾についても。 
なんかまあ全体的に「私が考える最強の理想的育児」という感じではあるのですが、「こういう事態になったら、どうするのがいいのかな? 私はどうするだろう?」と想像する機会が得られただけでもすごく良かったと思います。もちろん内容も個人的には良かったです。

とりあえず以下、私が特に「へ〜」と思った、TAOというモットー、死について、躾についての3つをざっくりまとめました。本当にざっくりなので、ぜひ本を読んで頂きたいです。

TAO

著者は子育ての基本として、「TAO」というモットーを掲げています。禅の道(タオ)からインスピレーションを受けたようですが、そこにさらにT…Time(時間)、A…Affection(愛情)、O…Optimism(楽観主義)という意味を付け足しています。 
つまりどのような状況においても、子供のために時間を割き、笑顔やハグやユーモアで愛情を伝え、前向きにあることで乗り越えられるのだ、ということらしいです。

ー子どもというものは、順調なときであっても、親の「時間」を必要としています。困難な時期には、その時間がさらに重要なものとなるのです。(p.22)
 
ー前向きな姿勢は、怒りや不満、悲しみ、嘆きを否定するものではありません。ただ、とにかく正当に対処するということなのです。(p.26) 


道蓮
道蓮くん(すみません)

【死について】 

著者は、いずれ訪れる大切な人の死に子供が直面する前に、動物や生き物の死に触れさせて準備させることを勧めています。そして子供が小さいからといって、死を隠してはいけないとも。動物やアニメキャラの死について、「眠っているだけ」「次のシリーズで戻ってくる」などと誤摩化してはいけないと書いています(いや本当に戻ってくる場合も結構あると思うんですけど。でも本当に帰ってきてほしい人ほど帰ってこないんですよね……ってこれは全然関係ない話ですが……)。

この本によれば、生と死という始まりと終わりがあることを理解し始めるのは4歳で、5歳になると、より死への理解が深まるそう。これが本当かどうかは分かりません。一応簡単にぐぐって上位にあるサイトをさら〜っと読んでみたら、死をある程度具体的に把握できるのは概ね4〜7歳くらい? ソースとなり得る論文とかには全然アクセスしてないのであれですが……。しかし結講早いんですね。私自身はどうだったかな〜頭からっぽだったからなー。

(参考:子供は何歳で生と死を理解するのか? All about

ちなみに、いざ子供に人の死を伝えるときには、回りくどい言い方はせず、ズバっと要点を言うべきだと書かれています。親の不安を隠さず、誤摩化しもせず、決まり文句は使わず、率直に事実を言うのがいいそうです。

ー子供が求めているのは、穏やかな率直さと思いやりあふれる静寂です。(p.51)


本当にすごいざっくり書きましたが、あまりにも搔い摘んで紹介したせいで、著者の意図とは違う印象を与えてしまっているかもしれません。本書には子供が死に接する際の注意や親へのアドバイスなどがちゃんと丁寧に書かれています。
あとは死別だけじゃなく離婚や病気の宣告の際にも共通する、悲しみを乗り越えるための三段階とか、年齢別の子供への対応法、親が気を付けるべき子供のサインなども載っていました。

【躾と罰について】

難しい状況における子育てについてを説明してきた本書ですが、最後に躾についても一章丸々使って書いています。

ー「罰」というのは、「親はおとなとしておまえに言うことをきかせることができるし、そうするつもりだ」というメッセージを伝え、多くの場合「おまえのために」という合理化をともないます。(p.214)

<罰を頻繁に与えることのデメリット>
・親も子も、根底にある原因を避けるようになる
・子供が自分のやったことを認めなくなる
・結果、責任を取ったり傷つけた相手を思いやる機会がなくなる

子供に対してよく使われる「罰」の手段は、暴力だけでなく、孤立させたり、恥をかかせたり、禁止したり、筋の通らないことを押し付けたり(家具を壊した罰としてゲームを取り上げるなど)、などがあります。このようなやり方だと、行動とその結果に因果関係がないため、子供には理解不能になってしまうんだそう。そして間違ったことをしたときにとにかくそれを隠そうとしたり、自分が酷い扱いを受けていることにばかり捕らわれたりしてしまうとのこと。


一方、躾について。
先ほど子供には時間をかけるべきだとの考えが出てきましたが、著者はここでもやはり同様に「時間を割いて根気よく躾をする」ことの重要性を説いています。親が自分でテキパキ片付けて、さっさと気持ちを切り替えてしまう方がずっと簡単だけど、それではいけないのだと。

まず子供がやってしまったことについて、①どうやって修復するか ②今後同じことが起こらないためには という2点を考えます。
幼児の場合、大抵はわざとやった訳ではなく、壊した物や人間関係を自分で修復するのは難しいかもしれませんが、「小さいから仕方ないね〜と無条件に許す」でも「ダメでしょ!と叱りつける」でもなく、子供に持てるだけの責任を持たせ、解決への方向を示し、自分で解決できるように励ますのがいいそうです。

<躾のステップ>
①自分のしたことを子供に分からせる。
②担えるだけの責任を与える。
③解決する選択肢を示す。
④尊厳は傷つけない。

さらに、子供の行為が重大な結果をもたらした場合、上記ステップに加えて「三つのR」という要素も考慮します。

<三つのR>
①Restitution(償い)
②Resolution(決意)
③Reconciliation(和解) 

具体例として著者が挙げているのは、「4歳の子供がクマのぬいぐるみをめぐって妹を叩いたとき」。
このときやってはいけないのは、代わりに言い訳をする(夢中になって叩いちゃったのよね、とか)、 頼み込む(「お願いだから妹に優しくして」)、もう一つぬいぐるみを買う、など。もちろん怒鳴りつける、脅す、辱めるなどもダメだそうです。

ではどうするかというと、まずは子供の気持ちを受け止めつつ、やってはいけないことを教え、気持ちを鎮めさせる。このとき、落ち着きを取り戻すための選択肢を三つ与える。
選択肢が二つ(例えば「自分の部屋に行くか、このイスに座りなさい」)だと、子供は親がどちらを選ばせようとしてるのかを見抜く場合があるけど、三つにすることで親の意図が見えにくくなり、子供が自分で選べるようになるそうです。
そして子供が選んだものを尊重する。
「ここにいたい」と言われたとき、「ダメ! 向こうに行きなさい」とは言わない。
気持ちが落ち着いたら、自分のしたことを「修復」させる。
放り投げたぬいぐるみを拾わせる、など。謝罪は強要しない。
続いて「決意」。「今後、何をしないか」ではなく「何をするか」を考えるために、時間をかけて人付き合いや遊び方について教える。

ー四歳の子どもにはわかりにくいかもしれませんが、少しずつ身につけていかなければならない大事な姿勢です。「だめ」と本気で言っていいのだということ、相手はそれを尊重すべきなのだということを知っておけば、十代になってから大いに役立つでしょう。(p.232) 

最後は妹と仲直りする「和解」。一緒に遊び、後味の悪さを拭い取る。
 
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ここまで書いといてなんだけど、この本に書かれてるのは正に理想論ですね……。親がこうしてあげれば、子供はこう育つのです、という感じで書かれているけど、人間ってそんな「この公式を使えば正しい答えが出せます」ってほど単純じゃないのでは?とも思ったり。ただ子供の人格形成や人生の根幹に関わるようなことについては、理想論つーか指針となる考えが大いに必要なのかなとも思います。しかし子供がぬいぐるみを放り投げる度に上記のような手順を踏んでいたら、マジで一日何にもできなさそう。専業主婦の私でも時間が足りない。

とは言えすごく勉強になりました。理想通りには出来なくても、志は高く持っていきたいものです。それに、死についての章で、子供に動物やキャラクターの死で準備させるとありましたが、親もまた必ず来るであろう難しい状況への準備が必要なんだと思います。
こうしてはいけません、こうするのです、さもなくば子供がこんな風になってしまいますよ、という論調で書かれてるので、凹んでるときや余裕のないとき、この手の理想論にうんざりしてるときに読むのはお薦めしませんが。

ちなみに著者はいじめについての本も出しているようなので、それも気になります。前作『子どもに変化を起こす簡単な習慣』も日米でベストセラーになったそうですし、ぜひ読んでみたいです(amazonレビューで「実生活には活かせない」と書かれてて笑ってしまいましたが……)。